きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『食糧と人類―飢餓を克服した大増産の文明史』ルース・ドフリース

タイトルに惹かれた。なぜ人類だけが食料生産に成功して、爆発的に生息数を増やすことができるのか純粋に気になった。食料が大量に生産され、大量に廃棄されるようになった経緯を知りたくて読んでみた。

食糧と人類 ―飢餓を克服した大増産の文明史

食糧と人類 ―飢餓を克服した大増産の文明史

ルース・ドフリース(??~)

コロンビア大学、経済・進化・環境生物学部教授。「持続可能な開発」の研究に携わる。

1.ヒトとヒト以外

「人類は社会学習の達人だ。身体の割に大きすぎる脳は情報処理をするための複雑な構造をそなえ、社会的学習を支える。」(p.62)

大きな社会集団で協力して狩りをするには記憶力、計画性、コミュニケーション能力が求められてヒトの脳は大きくなったのかもしれない。大容量で高度な社会的学習向きであるが、文化を発展させることができたのは人間だけという理由を累積学習の高さにあると述べられている。

2.食糧大増産への奇跡

「殺虫剤は増やすことにより、逆に自然選択をうながし、生き延びて子孫に遺伝子を受け渡せる個体を増やしてしまう」(p.207)

「殺虫剤は野生生物を殺すだけでなく、化学物質が食物連鎖をへて生物の対内に濃縮されていく生物濃縮を引き起こした。」(p.209)

地球の循環メカニズムによって制約を受けていたが、その縛りから文明が解放されたことが書かれている。それ以後は、既存の問題が解決されると、新たな問題が発生していることの繰り返しであることが分かる。殺虫剤は、そのうちの一例である。詳しくは、本著で確かめてほしい。

3.農耕生活から都市生活へ

「味蕾がよろこぶ第二要素は脂肪分と糖分であり、それらが安く手に入るようになると、高脂肪・高カロリーの食生活に勢いがついた。」(p.247,251)

いまは、戦争や疫病よりも、砂糖で死ぬ人が多いというのを思い出した。

「肥満と地球の疲弊、飽食のなかの食料不足という悲劇。」(p.260)

いまは、食料不足よりも、食べすぎで死ぬ人が多いというのを思い出した。

[感想]

文明とは、人類が得ようとしていた恩恵とともに、新しい災厄を生み出し、それを解決すると、またつぎの災厄が生まれていることが、数百万年にわたる食糧大増産の奇跡をなぞって思い知らされた。それと同時に、人間による新しい発明は、根本的な解決に導いていることはなく、目の前の問題を解決することに導くことしかできていないと思った。