きのみきのまま

女子大生の読書備忘録

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ

家族関係は、人格形成に大きな役割を果たす。家族の形態が変わりながらも、愛情をかけてもらって、結婚という人生の新たなスタートまで渡されるバトン。自分に取り巻く、大事なものに気づかされる一冊。

【2019年本屋大賞 大賞】そして、バトンは渡された

【2019年本屋大賞 大賞】そして、バトンは渡された

瀬尾まいこ(1974~)

大阪府生れ。大谷女子大学国文科卒。

1.17歳、高校を卒業するまで

「私に必要なのは、悩みだ、悩み。これだけ手を広げて受け止めようとしてくれているのに、何もないのでは申し訳ない。」

主人公の女の子は父親が3人、母親が2人。苗字も4回変わって不幸だと思われるが、不幸じゃなくて申し訳ないという。リアリティを求める話ではなく、多くの人がもっている価値観ではないことを念頭に読むべきである。小説に、自分にはない新しい価値観を求めている人には最高だと思う。

2.22歳、結婚に至るまで

「本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へと大きなバトンを渡す時だ。ある日決めた覚悟が、ここへ連れてきてくれた。」(p.372)

短大卒業後、山本食堂という小さな家庭料理の店に就職する。そこで結婚することを決めるが、家族から反対を受けてしまう。うまく説得させられて、結婚式当日にヴァージンロードの先にいる彼をみて、父親が思った一節である。このバトンが、どんな未来に向かって走っていくのだろうと想像させられた。

[感想]

本屋大賞ということもあり、多くの人が読んでいるとのことで手を伸ばしてみた。この本を読んだ人の中には、主人公の明るい部分しか描かれていないから物足りないという人もいると思う。それは、複雑な家庭に生まれている人がもつ暗い部分に共感したかったり、そのような境遇に生まれた人への理解の一助になると思ったからに違いない。私自身は一般的な家庭環境で育っているから、そこは共感できる。もし、複雑な環境に身をおいても、愛情をたっぷり受けて育ったら、前向きに強く生きていけるのかなと思わされる一冊ではあった。